雑多で微細なメモメモ・モメント・メモリアル

そういえば今日さ、〇〇について考えてたんだけど聞いてくれる?

ifバージョヌ

吾輩は猫である。名前はまだ無いとしよう。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは少年という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。

この少年というのは常々用もなく我々を追い掛け回し無用な恐怖を煽る厄介な生き物であるという話である。しかしその当時はなんという考もなかったから別段恐ろしいとも思わなかった。ただその掌に抱き上げられるその時にたくさんおったような兄弟の気配はスンと消え肝心の母親すらどこか更に暗い所へ潜っていったようでかすかにシャアと怒りの籠った声が少年に向けられたようだったと思う。

今でも確証がないがそれが唯一の野良と呼べる頃の記憶であったためそうであったと思うようにしているのだ。

この少年の胸元で朧気ながらもこの体験を記憶しておこうと懸命に意識するもやがてむやみに眼が廻り始めた。胸が悪くなる。到底助からないと思っているとどさりと音がして眼から火が出た。

 

「こうして私はアズナブル家に引き取られる事となったのだ。母の顔も分からぬ生い立ちだが唯一の記憶として残っている声から、母から頂いた名前としてこの名を名乗っている。」